2013年4月1日

どこまでやる?

感染症病棟にHIV感染の患者さんがいました。この方はまじめにHIV感染の治療を受けていたのですが、全身倦怠感を訴え、検査入院となりました。入院当日に発熱、サチュレーション(酸素飽和度)が低下してきました。状態が急激に悪化する可能性があります。感染症病棟には本病棟のようなICU施設がないので本病棟へ移動する必要がありました。感染症病棟は隔離されたところにあるため、緊急で本病棟へ移動する場合には一般に行われるように112番で救急車を呼びます。

肺結核の疑いのため、キャパシティーが限られているICUの病室を占領して隔離しなくてはなりませんでした。後に呼吸状態はさらに悪化して人工呼吸器につながれました。同時に急性腎不全のためICUで透析が行われました。何とか呼吸が安定したと思ったら、今度は髄膜腫という脳の腫瘍が見つかりました。脳外科にコンサルトすると、今後視神経を圧迫する可能性があるので手術適応とのこと。これで終わりではありません。血液のがんが疑われ、骨髄穿刺(骨髄を採取する検査)施行。肝臓機能の数値が急激に上昇したため、肝生検(肝臓の組織を採取する検査)施行。そのあと内蔵からの大量出血でショック状態に・・・。また振り出しに戻ります。もう十分、誰もが思ったのではないでしょうか?

数週間後、何とか安定状態を取り戻したこの患者さんはようやく感染症病棟に戻ってきました。さすがに一般病棟に戻ってきて嬉しそうでした。医学的に必要であっただろう検査・処置でしたが、どれだけこの方を苦しめたことでしょう。それでもこの患者さんはいつも静かに私たちに微笑んでくれました。一般病棟では理学療法士と必死に病室を歩く練習をしていました。

医学の進歩で多くのことが可能になったのは事実です。しかしリハビリ病院へ転院となったこの患者さんを見送りながら、私は「治すとは一体どういうことなのだろうか?」と複雑な気持ちになりました。

06/04/2013に堀籠晶子が次のカテゴリーに投稿しました